RNAの構造~DNAとは似て非なるRNA~

DNAのざっくりとした役割、DNAの構造などを解説してきましたが、今回はRNAの紹介をしてみたいと思います。

DNAと似ているようで、まったく違う働きを持つRNA。

今回は、その構造について重点的に解説してみたいと思います。

世間一般でもDNAという言葉はよく知られていますが、RNAという言葉はあまり知られていません。

DNAという言葉をテレビや新聞で耳にすることはあれど、RNAというワードは生物学に触れていないとまず聞くことはないと思います。

知名度ではDNAには全く敵わないRNAですが、生物学的な役割はDNAよりも多様で、生物にとってはきわめて重要なもの。

生体内で起きる様々な現象を理解する上で、RNAに対する理解は必須となってきます。

RNAの構造

RNAの構造を簡単に示しました。デオキシリボースではなくリボースが使われ、また、使われている塩基の種類に違いがあります。

RNAは「ribonucleic acid」の省略形で、日本語訳では「リボ核酸」となります。

DNAとの違いは、英語名・日本語名ともにdeoxy-デオキシがあるかないかというところですね。

実際のところ構造はよく似ていて、両者の違いは以下の2点となります。

DNAではデオキシリボースが使われているのに対し、RNAではリボースが使われている

DNAでもRNAでも使われる塩基は4種類だが、DNAでは使われずにRNAでのみ使われる塩基が存在する。

デオキシリボースとリボース

デオキシリボースとリボースの違いは、2'位の炭素に水素原子が結合しているか水酸基が結合しているかの違いです。

デオキシリボースとリボースの違うところはたった1つだけで、2'位の炭素に水素原子が付くのか、水酸基が付くのかという点のみです。

デオキシ (=deoxy) は英語にすると脱酸素という意味なので、デオキシリボースの方が酸素原子が少ない、つまり2'位に水酸基ではなく水素原子が付いているという風になります。

RNAのみに存在する塩基・ウラシル

RNAではチミンが使われず、代わりにウラシルが使われます。

そして、DNAでもRNAでも使われる塩基は4種類なのですが、RNAではチミンが使われる代わりにウラシルが使われています。

チミンとウラシルでは名前が全く違いますが、その化学構造の違いはメチル基が付いているかいないかというだけ。

構造を丸暗記する必要はないのですが、やはり構造を見てどれがチミンでどれがウラシルかの判別が付くといいですね。

ただ、この後で紹介するDNAの変形と修復の話を読むと、どれがどの塩基か比較的判別が付きやすくなると思います。

DNAとRNAの構造の違いと意味

RNAもDNAと同様にホスホジエステル結合で伸長していきます。

DNAもRNAも、ホスホジエステル結合によって長く伸長していく点は同じです。

では、水酸基の量が違ったり、使われる塩基が違うことで、どのような違いが出てくるのでしょうか?

DNAにとって最も重要なことは、自身が持つ遺伝情報を守り抜くことです。

DNAにとって最も重要になるのは、タンパク質の設計図になる塩基配列を正しく保管すること。

つまり、DNAが変形を受けにくく、仮に変形を受けても速やかに修復できる環境を整えておく必要が出てきます。

これに対して、RNAの中には自身がタンパク質のような酵素的働きを持っているものがあるので、適時作り出されて適時分解されることが必要です。

DNAにウラシルが入っていると‥

シトシンは水と反応して脱アミノ化し、ウラシルになります。

実は、ウラシルがDNAに入っていると少し都合の悪いことが起こります。

DNAは常日頃から様々な損傷を受けているのですが、その中の一つに、シトシンが水 (=H₂O)と化学反応して脱アミノ化してしまう損傷があります。

この化学反応で生成するのはウラシルで、水との反応で生じてしまうことから、細胞内に水がたっぷりある生物としては必ず修復できるようにしておかないといけません。

DNAにウラシルが正式採用されていた場合、シトシンの脱アミノ化で発生したウラシルを修復できない可能性が出てきます。

ところが、DNAにウラシルが正式に使われていると、シトシンの脱アミノ化でC-G塩基対がU-G塩基対に変化したときに、UとGのどちらがエラーで発生した塩基なのかを区別することができません。

放置するとDNA二重らせん構造に歪みが出るので必ず修復はしなければならず、結果的に1/2の確率でUではなくGの方を取り除く可能性が出てきてしまいます。

これに対して、本来のDNAではウラシルではなくチミンが使われており、ウラシルが存在すればウラシルの方がエラーで発生した塩基だと区別できます。

従って、DNA修復を確実に行うという点では、DNAにウラシルを使わずチミンを使うことが合理的だと言えます。

RNAの水酸基

水酸基には余った電子対が存在し、これがホスホジエステル結合と反応するとホスホジエステル結合が切断されます。

また、リボースが使われるかデオキシリボースが使われるかも、RNAの安定性に若干関わっていると考えられています。

というのは、RNAではホスホジエステル結合の近くに余った電子対を持つ水酸基が存在。

このため、水酸基とホスホジエステル結合が反応し、リボヌクレオチド間の結合が切断されてしまう可能性が出てくるのです。

もちろん水酸基があるからといってそう簡単にホスホジエステル結合が切れてしまうわけではないのですが、少しでも安定性を高めたいという意味では、DNAにリボースは使わずデオキシリボースを使うのが理にかなっています。

まとめ

このあたりで、いったんまとめに入りましょう。

RNAがDNAと違うところは、
デオキシリボースではなくリボースが使われる
塩基としてチミンは使われずにウラシルが使われる

の二点でした。

DNAとRNAを比べると、DNAの方がタンパク質の設計図としての情報を守るのに適したつくりになっています。

では、RNAは具体的には何をしているのか?

RNAは代表的なものでも3種類のRNAがあって多機能なので、働きについては次回以降ご紹介をしていこうと思います。

ここまで、お読みいただきありがとうございました。

またの機会にお会いしましょう。

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