RNAの働き~mRNA、tRNA、rRNA~

前回はRNAの構造について解説をしたのですが、その機能については全く触れることができませんでした。

RNAはDNAと違って様々な働きを持つのですが、このページではその中でも代表的なmRNA、tRNA、rRNAの働きを紹介したいと思います。

DNAが二本鎖なのに対し、RNAは一本鎖で存在しています。

DNAは相補的な鎖と二本鎖を形成していますが、それに対してRNAはどのように存在しているのでしょうか?

実は、RNAはDNAと違って基本的に一本鎖として存在しています。

RNAはDNAから合成されており、二本鎖DNAの片方の鎖の塩基配列が鋳型となっています。

なぜRNAは一本鎖として存在するかというと、RNAには自己複製能力がなく、DNAを元にして作られていることに起因します。

例えば、タンパク質を作りたいとき一度DNAからRNAに塩基配列の情報をコピーするのですが、タンパク質の設計図として必要なのはDNA二本鎖の内の片方だけです。

つまり、片方のDNAを元にRNAを作ればオーケーなので、RNAは一本しか合成されません。

RNAは一本鎖の中で塩基対を形成するため、塩基配列次第で様々な形に折りたたまれます。

ただし、DNAと同じように塩基対を形成することは可能で、一本鎖内に相補的な塩基配列があると折りたたまれるような形になります。

この塩基対が長くなれば二重らせん構造を取ることも可能で、RNAはDNAに比べると立体的にも複雑な形をしていることが分かります。

RNAの主要な働き

RNAの中でも、mRNA、tRNA、rRNAは特に重要な働きを持ちます。

多様な構造を取れることから、RNAには様々な種類が存在。

特に有名かつ重要なのが、
メッセンジャーRNA (mRNA)
トランスファーRNA (tRNA)
リボソームRNA (rRNA)

の3つのRNAで、いずれもタンパク質の合成に関わってくるのですが、担っている役割が異なります。

メッセンジャーRNA,mRNA

メッセンジャーRNA(mRNA)は、必要なDNAの塩基配列をRNAとしてコピーした後、不要な部分をカットすることで完成します。

メッセンジャーRNA(mRNA)は、タンパク質の設計図にあたるDNA領域をコピーして作られたものにあたります。

DNAの塩基配列をRNAに写し取っているので、チミンはウラシルの形でコピー。

前述しましたように、タンパク質の設計図になるのはDNA二本鎖の内の片方だけなので、出来上がったRNAは一本鎖となります。

DNAの塩基配列をそのままコピーしたRNAの中にはタンパク質合成に必要のない配列もあるため、スプライシングと呼ばれる作業で不要部分をカット。

そのため、DNAの塩基配列をコピーした直後のRNAはmRNA前駆体と呼ばれ、スプライシングを受けたものがmRNAと呼ばれます。

mRNAの塩基配列は、タンパク質合成においてアミノ酸の連結順を指示しています。

mRNA上の塩基は三個一組のペアとなって、タンパク質合成に必要なアミノ酸を指示。

タンパク質合成装置はmRNAが指示するアミノ酸を順番に連結し、タンパク質を組み上げていきます。

トランスファーRNA,tRNA

トランスファーRNA(tRNA)は特徴的な二次構造をとり、アミノ酸との結合部位とmRNAとの結合部位を有します。

アミノ酸の運搬の役目を担うトランスファーRNA(tRNA)、アミノ酸の数に対応して数十種類存在することが分かっています。

このような特徴的な二次構造を取り、アミノ酸との結合部位・mRNAとの結合部位の両方を所持。

この性質から、mRNAの塩基配列をタンパク質へと変換する橋渡しができるわけですね。

tRNAは自身の塩基配列を使ってmRNAと結合し、アミノ酸を適切な位置に運搬します。

タンパク質合成装置の力を借りつつ、トランスファーRNAは自身の塩基配列と相補的な配列を持つmRNAと結合。

持ってきたアミノ酸はタンパク質合成装置によって連結されていきます。

リボソームRNA,rRNA

リボソームRNA(rRNA)は4種類あり、リボソームの大サブユニットに3種類、小サブユニットに1種類が含まれています。

リボソームRNA(rRNA)は、タンパク質と一緒になってタンパク質合成装置であるリボソームを構成します。

ヒトでは4種類のrRNAがリボソームに含まれていることが分かっているのですが、そのうち3種類が大サブユニットを、1種類が小サブユニットを構成しています。

rRNAはtRNAによって運ばれてきたアミノ酸の連結を行っています。

リボソームの小サブユニットは、mRNAとtRNAの対合を確認する足場を提供。

そして、リボソームの大サブユニットは運ばれたきたアミノ酸を結合していく役割を果たします。

これらの働きはタンパク質が主に担っていると当初は考えられてきましたが、現在はrRNAの方がむしろこれらの酵素的役割の中心にあり、タンパク質の方が補助的な位置にあると考えられています。

最も多いRNAは?

RNAの中で最も含まれる量が多いのはリボソームRNAです。

ちなみに、RNAの中で最も量が多いのはrRNAで、rRNAだけでRNAの70~80%が占められていると言われます。

続いて多いのがtRNAで、最も少ないのがmRNAという順に。

タンパク質合成に備えて常にスタンバイしている必要があるrRNAとtRNAが、やはりかなり量が多くなってくるのですね。

ちなみに、この3種類以外にもmiRNA,snRNA,snoRNA,などのRNAが存在するのですが、これらのRNAの働きについてはかなり専門的な範囲。

また別の機会にご紹介できたらと思います。

まとめ

mRNA,tRNA,rRNAはいずれもタンパク質合成に必要なRNAですが、それぞれ構造が違い異なる役割を担っています。

では、まとめに入ります。

RNAは一本鎖であるため比較的構造が自由で、塩基配列次第でいろいろな機能を持つことが可能です。

特に重要なのはmRNA,tRNA,rRNAで、それぞれタンパク質合成において設計図として働いたり、アミノ酸の運搬屋として働いたり、アミノ酸をくっつける役割を担っていたりします。

タンパク質合成をキチンと理解する上でRNAの存在を無視することはできないので、この3種類のRNAについては記憶に留めておきたいですね。

では、今回の解説はここまでです。

またの機会にお会いしましょう。

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