遺伝学用語確認~DNA、遺伝子、染色体、ゲノム~

DNA,RNAに関する基本的なところを紹介したところで、遺伝学に関する用語を確認していきたいと思います。

特に、「遺伝子」「染色体」「ゲノム」などの用語は慣れるまでこんがらがりやすい言葉ですが、遺伝学関係の論説で必ず目にすることになるのでしっかりとチェックしておきましょう。

DNAの中でも、人工合成などによって得られた比較的短いDNAはオリゴDNAと呼ばれます。

これまで紹介してきたように、DNAとはデオキシリボヌクレオチドが結合して長く伸長したものでした。

ヒトのDNAは短いものでも数千万単位のヌクレオチドが結合してできており、生体内に存在するDNAはかなり長いものになります。

また、DNAは人工合成することも可能で、研究に用いる用途で短いDNAを人工合成することは頻繁にあります。

簡易に人工合成が可能なDNAの長さは数十~数百塩基対ほどで、このような比較的短いDNAはオリゴDNAと呼ばれています。

遺伝子 (gene)

「遺伝子」にあたるDNA配列はRNAへとコピーされています。

生物学に触れていなくてもよく耳にすることがある「遺伝子」という言葉ですが、「遺伝子」とは、最も狭義の意味ではタンパク質のアミノ酸配列の指定に関わるDNAのことを指します。

つまりは、mRNAを合成する元になるDNAが「遺伝子」にあたります。

また、一部のRNAはタンパク質同様の機能を持っていることが解明されてきたことから、近年ではtRNAやrRNAの産生に必要なDNAも「遺伝子」として扱われ、tRNA遺伝子、rRNA遺伝子という言葉も使われるようになりました。

現状では、タンパク質や機能性RNAの配列を決定するにの関わるDNA配列が「遺伝子」と捉えておけば大丈夫でしょう。

「遺伝子」はDNA上にとびとびの存在しています。

このように、「遺伝子」は生物のDNA上にとびとびに存在。

ちなみに、ヒトのDNAは全部で60億塩基対ほどになり、その中にあると言われている「遺伝子」は約2万5千個です。

遺伝子の長さはものによって様々ですが、平均すると数万塩基対になるようで、ヒトの全DNAの中で「遺伝子」にあたるDNAは3~5%ほどと言われています。

逆にいえば、「遺伝子」に該当しないその他95%以上のDNAに関しては、機能があるのかないのかよく分かっていない部分が大半を占めています。

染色体 (chromosome)

ヒトではDNAは46本に分かれて存在し、基本的には2本1組に分類することができます。

ヒトのDNAは一直線に結合しているのではなく、いくつかに分かれて存在しています。

より詳細に言うと、ヒトのDNAは46本に分散しています。

しかし、中には同じ遺伝子が含まれている似たようなものが2本ずつあり、それは母に由来するものと父に由来するものの2つを持っているからです。

つまり、ヒトのDNAは基本的には2本1組に分けることができるのですが、生物学的な性の決定に関わるDNAに関しては同じ遺伝子を持っているペアである場合と、異なる遺伝子を持っているペアである場合があります。

DNAはタンパク質の力を借りて凝縮しており、この凝縮されたものが「染色体」と呼ばれています。

46本に分かれて存在するヒトのDNAは伸びきった状態で存在するのではなく、タンパク質に巻き付いたりしたてある程度凝集した形になっています。

このように、1本のDNAがタンパク質の働きを借りてある程度凝集したものが「染色体」と呼ばれます。

ヒトには1番~22番の染色体と、生物学的性の決定に関するX染色体、Y染色体が存在。

「染色体」という用語の中にはDNAもタンパク質も含まれているのが、少しややこしいところかもしれません。

ゲノム (genome)

ゲノムとは、その生物が持つ遺伝子を全て並べたものです。ヒトは2セットのゲノムを持つことになります。

「ゲノム」は英語では「genome」と表記され、「gene、遺伝子」と「chromosome、染色体」を掛け合わせて作られた言葉です。

造語の由来から、染色体の中に含まれる遺伝子を指す言葉となっており、特定の生物が持つ全遺伝子のセットが「ゲノム」ということになります。

ヒトゲノムといえば、ヒトが持っている遺伝子を全部並べたものということになりますね。

性染色体上の遺伝子に関しては別ですが、原則としてヒトは1種類の遺伝子を2つ持つことから2セットのゲノムを持つというように言います。

まとめ

今回は遺伝学分野でよく目にすることのある用語を紹介しました。

生物学の発展とともに用語の定義は少しずつ変わることもあり、今回紹介した用語は生物学の常識と言われながらも意外と説明するのが難しい言葉だったりします。

RNAの機能などは現在進行形で研究が進んでいますし、研究が進めば「遺伝子」や「ゲノム」という言葉の解釈はこれからも少しずつ変わっていくかもしれません。

今後の解説ではこれらの用語を使っていくことが多々あると思いますが、もし用語の使い方で迷うことがあれば、このページを見返していただければと思います。

では、今回の解説はここまでです。

またの機会にお会いいたしましょう。

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